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多くの出会いに満ちた週末2日間でした

前任校において,5月10日に実施しました生徒・保護者向け「人権教育講演」(テーマ:インターネットにおける人権侵害の現状と課題),9月24日に実施しました2年生対象「性教育講演」,および本日10月26日実施されました;「高校教科『情報』シンポジウムin九州」において,「専門教科情報に学んだ3年間」と題して講演を行った音声をそれぞれmp3ファイルにしました。興味のある方は,ダウンロードしてお聴きくださればと思います。→;「ラジオ出演・講演集」

「生物教師の作品集」『いのちのエイズ教育』(収録済)
「生物教師の生物学講座」
(ユニークな言葉づかいによる生物学の解説)

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25日(土)は,午前出前講義,午後修猷フェスト(中学生体験入学)が行われました。出前講義の全体会として,修猷館平成4年卒で私の後輩にあたる登山家の栗秋正寿氏が,「あなたはどんな“人生の山”に挑戦しますか?」という演題で講演を行ってくれました。北米最高峰のマッキンリーに史上最年少で冬季単独に成功,フォレイカーには冬季単独に世界で初めて成功という実績の持ち主だそうですね。美しいスライドと,彼の淡々とした語り口に,聴いている生徒さんも,そして私たち教師も,みなが魅了された90分間だったように思います。

修猷館に学ぶ者は,私たちの時代からもちろんそうだったのですが,一人ひとり何か夢中になるものを見つけ,それを我が猷(みち)として,卒業後の人生を歩んでいく強さ,たくましさをもっています。私自身が高校時代夢中になったのは,「水泳」と「日本文学」,そして「生物学」でした。振り返ってみると,その時見つけたものが,卒業から30年が経過しようとする今も,私のベースになっていることがわかります。

先日我が猷(みち)と書きました「授業道」に最初に目覚めたのも,振り返ってみると,やはり母校修猷で行った教育実習だったと思います。幼少のみぎりから二十年近く温め続けていたガンの研究者への思いを,母校の教壇は,たったの2週間で見事に奪い取ってしまったのです。それほどに自分が愛してやまない「生物学」を十代の若者に教えるということは私にとって魅力的だったのです。

修猷フェストでは,「生物研究部」のネズミの迷路実験とブロッコリーを用いたDNA抽出実験,いずれも大盛況でした。部活動見学の時間は,それほど多くはなかったのですが,ほぼ絶えることなく中学生と保護者の方が訪問してくださいました。「物理研究部」「化学研究部」と合わせてSSC(修猷館サイエンスクラブ)と総称するのですが,おそらく我が「生物研究部」の集客率は群を抜く高さだったのではないでしょうか。先生方も,館長をはじめとして多数訪れてくれました。ありがたいことです。やはりネズミの迷路実験は,話には聞いたことがあっても実際に見たことがある人は案外少なく,みなさん興味をひかれた様子でした。約1ヶ月がかりで準備に当たってきた甲斐があったというものです。2名の部員さんもきっと満足してくれたことでしょう。

一つ誤算だったのは,訓練した2匹の雌ネズミの対照実験(コントロール)として,まったく一度も迷路を体験したことがない雌ネズミを用意し,最初に迷路を通らせてゴールになかなかたどりつけない様子を見せてから,さて,訓練したネズミは…というストーリーを考えていたのですが,対照実験のネズミが殊の外賢く,3回目ぐらいからほとんどミスをしないようになり,あまりゴールまでのタイム差がつかなくなったということがありました。今回の場合,当日を初めての体験とするために賢さを確かめるすべもなく,致し方なくはあったのですが,春の大文化祭に向け,それぞれのネズミの迷路適応能力をきちんと数値化して,訓練ネズミと対照実験用ネズミを分ける必要があると感じました。

悲しい出来事が一つありました。私は,食べること以外では生き物の命を奪わない生き方をしているつもりですが,生物教師をしていますと,実験用の生物の飼育等をする必要があり,期せずして死なせてしまうということがどうしても起こります。4月からの約半年間で,採集したプラナリアや卵からふ化させたアルテミア(ブラインシュリンプ,シーモンキー)の死に接してきました。そのたびに何とも言えず悲しく辛い気持ちに襲われます。

約1ヶ月前,いただいたうちの1匹のネズミが右腕のあたりを腫らしているのを,元の飼い主である生徒さんが発見しました。傷口から細菌が侵入して炎症を起こしたか,はずみで骨折したかしただろうかと心配し,何とか治ってくれればという思いで,その後も観察を続けましたが,腫れは一向にひく気配がなく,むしろ日増しに大きくなっていきました。次第に私の心の中に,悪性腫瘍かも?という危惧が芽生えてきました。

そのネズミは,対照実験として選んだ分と同じゲージに入っていましたので,迷路実験の際に,一緒に連れてきていました。元飼い主の生徒さんも久しぶりに「生物研究部」を訪れて迷路実験を眺めていったのですが,その際には,腫れた右手をものともせず,元気にゲージの網をよじ登ったり,乗って走るとくるくる回るおもちゃで遊んだりしていました。

迷路実験を部員さんに任せ,ジョーシン九州に持参する資料の用意をしていた私のところに,一人が血相変えてやってきて,「先生,右手が腫れたネズミの様子がおかしいので見に来て下さい」と言いますから,すぐにかけつけました。さっきまであれほど元気に走り回る様子を見せていたネズミが床に横たわり,息も絶え絶えでした。どうしてやりようもなく,私に出来ることはただ見守るだけといった状況でしたが,最期に足を一度ピクッと動かしてこときれました。腫れた手の部分が頭よりも大きくなっている壮絶な最期の姿でした。元飼い主に最期に会えて思い残すことなく死を迎えられただろうかとは考えましたが,こみ上げてくる悲しみで,目に涙がにじんで来ました。私に出来るせめてものなぐさめとして,丁重にお墓を作り;「般若心経」を唱えさせてもらいました。

修猷フェスト終了後,後片付けにもあまり携われず,次に私を待つ北九州の地への旅立ちました。いったん小倉駅近くのホテルにチェックインした後,実行委員会副委員長の山之上先生,実行委員の一人でパネルディスカッションのコーディネーターでもある渡辺先生と落ち合い,食事を共にしながらシンポジウムの件を話しました。今回の講演を私はPowerpointのスライドを用いず,語りだけでやりたいと思っているが,と申し出ましたところ,快く賛成して下さいましたのでいよいよ心は定まりました。

いやそれではバランスが悪いから,やはりPowerpointを用意した方が,とのアドバイスをいただくようでしたら,その晩のうちに作ろうという心づもりもあったのです。ノートパソコンはホテルに持ち込んでいましたし,ディジタルデータもありますがら,スライドを20枚程度用意することはそれほど難しい作業ではなかったからです。昨年,鳥取で実施されました全国専門学科情報科研究協議会の発表スライドも前の晩,ホテルで作り上げたことを思い出します。いつもながら自転車操業状態ばかりやっている私です(笑)。

明けて26日(日),修猷館の先輩でもある実行委員長雨宮先生の「情報教育とは」と題する講演から「高校教科『情報』シンポジウム九州(ジョーシン九州)」がスタートしました。何度か一緒に飲んだりもしていますが,雨宮先生の情報教育への熱い思いには,いつもながら圧倒される気持ちにさせられます。大学の現場で長らく培ってきた「情報学」を高校現場における教科「情報」に取り入れ根づかせたいという趣旨で話されたました。スライドに表示される刺激的な言葉の数々が大変印象的でした。

午後の2つめは,「ユビキタス時代へのICT 教育と高大連携事業」と題する佐賀大学の中村先生のお話でした。実行委員会で,3月まで工業高校に勤めていた先生であり,極めて精力的に高大連携の取り組んでいる方だとお伺いしていましたが,IpV6を使った実践内容は本当に素晴らしいものがあると感じました。先生が勤務しておられた有田工業高校の生徒さんが佐賀大学の学生さんと一緒に有田陶器市等の地域の行事に参加し,生き生きとした表情で活動している様子が十分伝わってきました。

3つめは,「情報関連授業を支援する高大連携による遠隔TAの取組みについて」と題する山口大学の鷹岡先生のお話でした。ちゃぶ台に例えられように,インターネットの掲示板を利用して大学生・高校生・大学教員・高校教員が一体となってコミュニケーション活動を行っておられる取組につきましても,実行委員会の中で紹介があっていたのですが,実際に発表をお伺いし,特に素晴らしいと感じましたのは遠隔支援パターンをオートマトンの状態遷移図を用いて分析し,それをWebツール開発に生かしてあるという点です。

一昨年,九州工業大学情報工学部さんの情報専修免許公開講座の中で,オートマトンの講義を受け,ずいぶん苦労して勉強した記憶があります。非決定性有限オートマトンから決定性有限オートマトンへの変換も当時のノートを見直せば何とかまだやれそうです。オートマトンが教育活動の中に有意義に生かされている実例を知る機会を得て,また「情報学」への勉強の意欲も湧いてきたように感じます。

昼食をはさみ,午後はいよいよ私の講演の番が巡って来ました。冒頭,あえてPowerpoint等のスライドを使わずにさせていただく理由と,だからといって,スライドを使ったプレゼンテーションを軽視している訳では決してなく,前日に聴いた栗秋氏の講演などは,美しいアラスカの大自然の光景があってこそ余計に感動を生むのだからという話をさせていただきました。その後は,当初の予定通り,普通高校出身で勤務経験も普通科しかもたなかった私が数奇な運命をたどり,情報を基調とした学校作り,福岡県初の情報専門学科作りに携わるに至る経緯から始め,「高大連携」「マルチメディア教育」そして「情報モラル教育」を3つの柱とした話をさせていただきました。

講演内容を音声で公開するために,MDで録音したデータをコンピュータに取り込み,WAVファイル変換→mp3ファイル変換といった一連の作業をする際に,自分の講演内容を通して聴きましたが,やはりまだまだ技術的に未熟な面が多々あるように感じました。今回は情報量が多かったこともあり,少々早口になっている部分はある程度仕方なくはあるのですが,もっとこう表現すればよかった,この話も入れるべきだったと思う箇所もやはりあります。過去幾多の講演をこなしてきて,そのたびに録音した内容を自分で幾度も聴き直しては自分自身で添削して,また次に備えて…その繰り返しで今日までやってきました。ある面,自分に対して厳しく,より高度な「語り」の技術を身につけるべく努力はしてきたつもりです。耳を汚すことかと思いますが,上記サイトにデータを置いておりますので,興味をひかれる方は聴いて下さいますとありがたく思います。

なお,講演の中で25ページの内容という言い方で引用した箇所があります。ITシステム科の学科作りに当たり,私が入学してくる生徒さん向けに書いた文章です。以下に載せさせていただきますので,講演を聴かれる際,併せてご覧いただければと思います。

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 「情報」は,高度情報通信社会における“生き方”を学ぶ教科です。コンピュータを中心とする技術面の向上にのみ心を奪われることなく,自分自身の“生き方”をしっかりと見据えて学習に臨みましょう。
 何よりもまず,情報を取り扱う上でのモラルとネットワーク上のエチケットであるネチケットを身につけてください。原子力が戦争で用いられて多くの人の命を奪う結果になったように,科学技術は使い方を間違うと大変な災厄をもたらします。みなさんは,ITのスペシャリストとして誰よりも心正しき人になってください。
 “生き方”を学ぶためには,コンピュータに接してばかりいてはいけません。教室で黒板の内容や先生の話をしっかりノートに書き取り,自分の頭で考えながら授業を受けましょう。皆さんの頭脳に記憶されるのは,ノートの形です。自分の手で書いたノートは世界に1冊しかない最高の参考書なのです。「情報産業と社会」そして「情報と表現」の勉強を基本に忠実にきちんと行い,基礎力を固めてください。この一年で身につけた知識こそがみなさんの生涯の土台となります。
 「情報実習」を中心とする技術面の学習では,当面ワープロ検定3級に全員合格することを目標に,タイピングのマスターを心がけましょう。コンピュータを使いこなすためには,一つの作業にかかる所要時間を極力短くすることが肝要です。タッチタイプを身につけて,キーボードを自由自在に操れることが,ITスペシャリストへの第一歩といっても過言ではないでしょう。実習の中で取り扱うソフトウェアは,どれもIT産業に必要不可欠なものです。ここでも基本をおろそかにせず,先生の指導を素直に受け取り,1つひとつマスターしていきましょう。課題を与えられたら,まず指示を正確に守り,期日に遅れないように提出しましょう。創意工夫をこらしたり,仲間と協力して作品づくりをしたりできるとさらに高評価がもらえるでしょう。 
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午後の2つめは,福岡情報教育授業研究会の仲間でもあり,昨年まで一緒に情報専修免許公開講座を受講した同窓生でもある,山口県岩国高校の山下先生が「研修を活かした授業実践」と題して講演をされました。山下先生の情報教育に対する研究熱心さと情熱,そして生徒に対する思いは,以前からよく存じ上げていますが,お話を伺うために感銘をおぼえます。今回は,ディジタル化が主たるテーマでしたが,修猷館の「情報B」でも一年次の学習単元として「アナログとディジタル」を取り上げておりますんで,大いに参考にさせていただける内容でした。この場を使いまして感謝申し上げます。

プログラムの最後として,「高大連携」をテーマにパネルディスカッションが実施されました。高校現場からのパネリストである藤本先生・江副先生は,現職教員等講習会の講師仲間であり,藤本先生は理科の同期採用,江副先生は,福岡県高等学校教科等研究会情報科研究部会の立ち上げを一緒にやってきた同志でもあります。今回無理を言ってパネリストを引き受けていただき,大変感謝いたしております。

当日終了後,パネルディスカッションのまとめをコーディネータである渡辺先生よりいただくことができましたので,感謝の意を表し,公式記録としてここに掲載させていただきます。

パネル討論「高大連携」

討論者
 藤本直樹(福岡県立宗像高等学校)
 江副秀雄(福岡県教育庁教育振興部高校教育課)
 中村隆敏(佐賀大学)
 下川俊彦(九州産業大学)
コーディネータ
 渡辺健次(佐賀大学)

パネル討論の内容

1 これまで行われた高大連携の実践についてのご紹介

藤本先生
 社会の未来
 携帯で遠隔制御+遠隔講義

江副先生
 学校の情報化
 学校段階間の連携、大学での情報の入試

中村先生
 IPv6遠隔操作
 MEDIA TEENS LIVE、生放送による勉強

下川先生
 高大連携授業、高校の単位、科目等履修生
 IT講習会、高等学校教師を対象

2 現在の高大連携の課題について

藤本先生
 普通科高校の制約、守備範囲
 普通科高校での実施上の条件

江副先生
 情報で教える内容がはっきりしていない
 中学、高校、大学で教える内容の連携がない

中村先生
 現場の温度差、校長・教育委員会との意思疎通
 筋を通して事務手続き、学校ネットワークの問題
 新たな実践テーマを見つける

下川先生
 情報と情報の溝
 リテラシとコンピュータサイエンスの違い、数I

3 理想とする高大連携とはどのようなものか

藤本先生
 「夢」
 情報で何を教えるのかを考えていければ

江副先生
 先生の連携、生徒の連携

中村先生
 オープンな関係、共同研究という新しい関係、
 予算
 大学生が情報教育を真剣に考える

下川先生
 情報モラル、ただし中学校で教えるまで
 コンピュータやネットワークの楽しさ
 情報と情報の溝を埋めたい

土・日と,時間にすればいつもと変わらないたったの2日間なのですが,本当に盛りだくさんの中身でした。体験は時に人を一回りも二回りも大きくするものだと思います。私も,この2日間で少しでも人間的に成長できていたらうれしく思います。かなりの長文になりました。私のブログを訪問し,文章に目を通して下さいまして誠にありがとうございました。今後も応援どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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